堀川建築設計室

CHIEKO HORIKAWA

後楽園
2008年4月26日

まえまえから行ってみたいと思っていた岡山後楽園に行って来ました
後楽園入口にてボランティアガイドさんの親切により、案内していただくことになりました


観騎亭:藩主が馬術練習をご覧になった

 

 
後楽園は歩きながら移り変わる景色を楽しむ回遊式庭園、シンボルは鶴。園内にはいるとどこからか鶴の鳴き声が聞こえてきます。タンチョウ鶴が飼育されています。美しい成鳥がゆったりとした檻舎の中で歩き、鳴いています(写真を撮り忘れたのが残念)。
  そして、百間の馬場へ。このほか射場もあり、武術の鍛錬の場となっています。この直線コースは馬術の練習場です。桜の古木がずらりと並んで、そのうちの一本は岡山のさくら開花標準木となっているそうです。それぞれが萱葺き屋根の観亭があります。正門脇の鶴鳴館以外は萱あるいは柿で葺かれ、なんとも優しい雰囲気を醸し出しています。


水路:旭川から水を引いている。秋には水面に紅葉で染まる

沢の池越しの岡山城(烏城)

 岡山は豊かな水源を持ち一級河川が3本も流れていて、そのうちのひとつ旭川を引き込んでいます。沢の池を中心に水路で景色が繋がれています。その中心の建物となるのが、延養亭です。贅を尽くした材、技術を集結して昭和35年に復元されています。屋根は萱・庇は柿葺き、柱材の一部は春日大社のご神木が使用されていたり、廊下の板材も裏側使いをして、経年変化でのむくりが排水対策になるように考えられていたりと、面白い話を聞くことができました。もっといろいろな工夫があるのでしょう。
 それにしても、岡山城といい後楽園の建物たちといい、戦災による消失ですっかり壊されているのにしっかりと絵図が残っていて復元できるということは、すごいことなのではと思います。絵図以外にも、藩主の日報のようなものが面々と残っているらしく、几帳面さと戦災で焼けなかった幸運がこの地にはあるのかなという気がします。 


延養亭:藩主の居室、贅をつくした造り

灯篭:つい、撮影したくなる形状  背景は廉池軒

延養亭からの景色:操山を借景にしている


能舞台:狂言の練習音をねこがじっと聞いていました

延養亭と並んで建つ能楽堂。藩主池田候は領民に対して寛大な統治を行い慕われていたということで、領民もことあるごとに能楽を楽しむ機会を与えられていたそうです。
 左の写真はベストショット。この日は狂言の練習の音が外まで漏れてきていました。その音を聞いているように能楽堂に向かってたたずむねこちゃんの様子が、みょうにカワイイ。我々がいた数分間も立ち去った後も、じっとこのままでした。能楽堂は気になる存在だったのでしょうか・・・後楽園には何匹かの猫が住み着いているようで、何度かのんびり横切ってゆく姿を見かけました。藩主と一緒でねこにも寛大な土地柄なのでしょうか・・・それとも、高貴なねこたち・・・?

大立石と花葉の池、栄唱橋から撮影

茂松庵:裏千家のお茶席が催されていた
花葉の池は6月になると蓮の葉や花で埋め尽くされてゆくそうです。ここにある大立石はいくつも切れ目が入っている奇岩です。何のために亀裂が入れられているかなぞなのでそうです。私は別の場所から運ぶためなのかと思ったのですが、そうではないようです。
 栄唱橋を渡ると茂松庵というお茶席があります。300円でお茶を飲ませていただけるそうです。丁度裏千家の有名な先生がいらっしゃる日だったのですが、お手前を頂戴する時間が無かったのは残念。ただ、気軽なお茶席とはいえ正客になる自信は・・・・・。

美しい水面、唯心山のつつじを見る

流店 :2層の簡素な造り

唯心山から延養亭を見る :ビルが見えるのが残念

流店内部:水の流れが心地よい
 
延養亭の前面は芝生が広がります。もともと延養亭の視界以外は水田がつくられ、茶畑、梅林、桜林、二色が岡、ソテツ畑と、牧歌的、四季を彩り、一年を通して楽しむ趣向に、作庭した津田永忠の知性と感性に畏敬の念を覚えます。
 一番目興味深く感じたのが流店。東屋といったたたずまいですが、亭の中央に水路を通しています。いかにも涼しげな風情。今流行の足湯のように、夏場の暑い時期に脚をつけて涼むのは考えるだけでも気持ち良さを感じさせます。水路を通すことで空気温度を下げ、見た目にも涼しげ、また脚を水につけることにより直接水の冷たさを感じることもできる・・・建築設備としての機能、遊び心、秀逸なのでは(私が言うのも何ですが・・・)。
 ここは二階があり、物見やぐらのような使い方が出来、藩主も楽しんだという古文書が残されているそうです。

八橋 と菖蒲:伊勢物語に由来する
 

ボランティアガイドさんに紹介いただいたランチ。見た目もかわいく、食前酒(梅酒)・デザート の小さなお饅頭もついて1260円はお得感がありました。お味もまるです。

 今回はボランティアガイドさんに案内していただくという幸運に恵まれ、庭園の見所から藩主のこぼれ話や領民の暮らしぶり等々詳しい情報が盛りだくさんにお話いただきました。ボランティアガイドになるために1年間講義を聴いたりレポートを書いたり、また金沢・京都等々見学に行かれたりお茶席に行かれたりと、熱心に勉強されていることにおどろかされます。それゆえの自信と誇りを持ってガイドされているのだなということも感じました。ほんとうにありがとうございました
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